目的: 胎児奇形を合併した双胎妊娠の染色体核型異常の臨床的特徴を検討する。
方法は以下の通り。 2000年1月から2010年9月までに中山大学第一付属病院に紹介された双胎妊娠のうち、超音波検査で異常と診断された胎児が1人または2人の計181例(362人)であった。 (1)母体年齢:母体年齢35歳以上の症例を妊娠先進群(105人)、母体年齢<35歳の症例を妊娠若年群(203人)、(2)妊娠方法:生殖補助医療による妊娠を生殖補助医療群(81人)、自然妊娠を自然妊娠群(227人)に分類、 (3)絨毛性:生殖補助医療により妊娠をした例を妊娠若年群、絨毛性で分類し、(1)妊娠先進群(105人、2)と(3)に分けて検討した結果、妊娠先進群、妊娠若年群、絨毛性で分類した。 一絨毛膜性双胎(MCT)妊娠はMCT群(123例)、二絨毛膜性双胎(DCT)妊娠はDCT群(185例)、(4)構造異常:構造異常のある205例を異常胎児群、構造異常のない103例を正常胎児群に分けた。 全胎児に超音波検査を実施し、308名の胎児に染色体検査を実施した。
結果を報告する。 (1)胎児の核型:双胎妊娠181例中、1または2胎仔に染色体異常があったのは23例(12.7%、23/181)、23例中20例は両胎仔の染色体検査が行われた。 308例中26例に染色体異常が認められ(8.4%、26/308)、異常核型の種類は異数体が最も多かった(53.8%、14/26)。 奇形胎児205人のうち21人に異常核型が認められた(10.2%、21/205人)。 (2)MCT群123例中7例(5.7%、7/123)、DCT群185例中19例(10.3%、19/185)が核型異常であった。 両群間に染色体異常の発生率に統計的な差はなかった。 DCT群では14例(7.6%、14/185)、MCT群では1例も異数性染色体を認めなかった。 この2群間に統計的な差が認められた。 DCT群の2例では、奇形児が1例のみで、他の胎児が死亡したため染色体検査を受け、核型はそれぞれ21トリソミーと18トリソミーであった。 残りの17例は2例とも染色体検査を受け、各妊娠の両胎児の染色体は異なっていた。 DCT群の染色体異常胎児19例のうち15例は構造異常を合併しており、MCT群の双胎妊娠4例のうち7例は染色体異常であった。 (3) 妊娠進行グループと若年妊娠グループの染色体異常発生率の比較:妊娠進行グループの染色体異常発生率は 7.6%(8/105) であり、若年妊娠グループのそれは 8.9%(18/203) であった。 両群間に統計的な差はなかった(P > 0.05)。 妊娠進行群では105例中6例が異数体であり(5.7%,6/105),妊娠若年群では203例中8例が異数体であった(3.9%,8/203)。 妊娠進行グループの異数体発生率は、妊娠若年グループに比べ有意に高かった(P < 0.05)。 (4) 生殖補助医療グループと自然妊娠グループの異常核型発生率の比較。 生殖補助医療群では81例中11例(13.6%、11/81)、生殖補助医療群では227例中15例(6.6%、15/227)の胎児が核型異常を有していた。 両群間に統計的な差異があった(P < 0.05)。 生殖補助医療群では異数体が7例(8.6%、7/81)、自然妊娠群では異数体が7例(3.1%、7/227)であり、統計的な差は認められなかった(P > 0.05). (5) 異常胎児群と正常胎児群の核型異常発生率の比較:異常胎児群では205例中21例が核型異常であり(10.2%、21/205)、正常胎児群では103例中5例が核型異常であった(4.9%、5/103)。 統計的な差はなかった(P > 0.05)。 異常胎児群では13人の胎児が異数性であり(6.3%、13/205)、正常胎児群では1人の胎児だけが異数性であった(1.0%、1/103)。 両群間に統計学的な差異が認められた(P < 0.05)。
結論 Aneuploidは胎児異常を合併した双胎妊娠で最も多い異常核型であり、特にTrisomy 21が多い。 Aneuploidは主にDCTの片方の胎児のみに発生し,染色体不一致はDCTで通常認められる。 一方、MCTでは、同じ異常核型を持つ双子胎児が異なる表現型を持つことがある。 この結果は、たとえ片方の胎児に構造異常が合併していても、双子の両方の核型を分析する必要があることを示唆している。