骨折後の治癒過程において、骨折部位に隣接してソフトカルスが形成され、ハードカルスに置き換えられ、最後に元の骨の形状にリモデリングされる。 骨膜の上皮層はカルス形成に必須な役割を果たすと報告されているが、in vivoでの直接的な証拠はまだない。 ソフトカルスの細胞系譜を調べるために、Prx1-Cre;ROSA26レポーター(R26R)、Col1a1(3.6 kb)-Cre;R26R, Col1a1(2.3 kb)-Cre;R26R, Sox9-CreERT2;R26R, Sox9-LacZ マウスで骨折治癒過程をXgal染色で分析した。 骨折前の骨膜の細胞がX-galで染色されたPrx1-Cre;R26Rでは、ソフトカルスのすべての細胞がX-gal陽性であったが、Col1a1(3.6 kb)-Cre;R26Rマウスでは、骨折前の骨膜の細胞がX-gal染色され、ソフトカルスの一部はX-gal陽性の細胞から構成されていた。 一方、骨折前に骨膜のカンビウム層の成熟骨芽細胞をマークしたCol1a1(2.3 kb)-Cre;R26R マウスでは、骨折部位のソフトカルスにX-gal陽性の細胞は存在しなかった。 これらの結果から、ソフトカルスの細胞の多くは骨膜の間葉系前駆細胞に由来し、成熟した骨芽細胞には由来しないことが示唆された。 興味深いことに、Sox9-LacZマウスでは、骨折3日後に骨折部位に隣接する骨膜にSox9を発現するX-gal陽性細胞が出現していることがわかった。 Sox9-CreERT2;R26Rマウスにタモキシフェンを骨折後3日間注射することにより、このSox9発現骨膜細胞が軟・硬カリの細胞を出現させることが実証された。 この結果は、骨折直後にSox9の発現が誘導された骨膜細胞が、骨折カルスの軟骨細胞や骨芽細胞の主要な供給源であることを示している。