甲状腺ホルモンは精巣の構造および機能の発達に重要であり、セルトリ細胞はトリヨードチロニン(T3)の真の標的細胞であると考えられている。 しかし、成人の精巣における甲状腺ホルモンの役割はごくわずかであると思われ、甲状腺ホルモンが精巣機能に影響を与えるメカニズムもわかっていない。 血液と精巣の関門があるため、精液中の甲状腺ホルモンの濃度は血漿中より低く保たれている。 我々は、T3が循環からだけでなく、チロキシンからT3への局所的な酵素変換によっても精巣に到達する可能性があることを発見した。 チロキシンの5’脱ヨウ素化と局所的なT3生成を担う酵素活性の存在は、イノシシの精漿でも確認された。 精液中の5′-デイオジナーゼ(5′-D)は、プロピルチオウラシル(PTU)非感受性II型アイソザイムが主であり、これまでパラクリンシグナルに関与する組織で発見されてきた。 分子内にセレノシステインを含み(オーロチオグルコースで阻害)、基質としてのreverse-T3に対する見かけのKmは0.36 nM、Vmaxは23.8 fmol I-/mgタンパク質/分である。 精液中の5′-DはPTUによって部分的に、しかし非競合的に阻害されるので、精液中には2種類の5′-Dアイソザイム(I型とII型)の存在を否定することはできない。 精巣の5′-D活性は3週目から4週目にかけて有意に上昇し,この上昇は精巣サイズの増大と同時であった. 精巣の重量増加と年齢の関係も同様の特徴的な変化を示し、5′-D活性の変化と対応した。 げっ歯類と異なり、思春期前のブタの精巣はセルトリ細胞に甲状腺ホルモン受容体を有しており、成長期のブタでは精巣の5′-Dが生物学的に活性なT3の局所供給を調節する重要な因子であり、精巣パラクリン機能において不可欠であることが示唆された。 本成果は、精液中の5′-デイオジナーゼの存在を初めて証明し、その特徴を明らかにしたものである。